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株式会社アクト・コンサルティング

経営コンサルティング

ノウハウを生み出すスキルを組織に定着させる

    これまで、ノウハウを見える化し、業務革新、人材育成、ノウハウ商品化に活用する方法を紹介してきた。これらの方法は、有能者が過去に生み出したノウハウを前提としている。では、ノウハウを生み出すこと自体はマネジメントできるだろうか。ノウハウの中には、偶然生み出されたものも多くある。これを、偶然に任せず、ノウハウ創造をマネジメントするのである。

ノウハウ創造のスキルが存在している

弊社がこれまでに実施した有能者調査によって、一部の有能者が、ノウハウ創造のスキルを持っていることを発見した。弊社では、このスキルを体系化し、「ATACサイクル」と名前をつけ、組織的な定着を実施してきた。ATACサイクルの定着によって、ノウハウを創造し続ける組織を作ることが出来る。

ATACサイクルは、「気付きを意味解釈してノウハウに換え、実行して成果を上げる」という一連の活動の、頭文字をとったものだ。

ノウハウ創造スキルで、個人が成果を上げる

ATACサイクルの実践で、社員1人1人のパフォーマンスを高めることができる。以下は、ある会社の、技術開発マネージャーの例である。

  1. Ah:「ピン」ときたら必ず立ち止まり、何に気付いたか考える
    彼のマンションで、マンション内の公園に関し、論争が起きていた。「公園は子供に自由に使わせるべきだ」、「折角植えた樹木や芝生を守るため、子供が使うのを規制すべきだ」という論争だ。マンションの理事会では、専門のコンサルタントにこの問題を解決させた。
    コンサルタントは、まず「公園は何のためにあるのか」アンケートで明確化した。アンケートの結果、多数決で「住民の憩いの場」と決まった。すると樹木擁護派は、子供が遊ぶことに反対できなくなった。しかし、不満は収まらない。そこでコンサルタントは、剥がれた芝生や樹木の整備の予算を編成する提案をした。つまり樹木の擁護は、目指すべき姿ではなく、目指すべき姿を維持するために解決すべき課題となり、この課題は金で解決できたのだ。
    これを聞いたこのマネージャーは、ピンときた。「論争は、このようにして解決できる!」。
  2. Thought:気付きを基に、ノウハウの仮説を作る
    彼は、上記体験(Ah)をもとに、「目指す姿を共有し、論争を収める」というノウハウの仮説を作った。
    論争においては、どちらにも主張がある。しかし、最終的にどのような姿を目指しているかと問えば、大きな方向で差はないことが多い。そこで早めに、目指す姿の合意を取る。その上で主張があれば、それは「目指すべき姿」を達成するための課題となり、解決策は関係者で協力して検討することが出来る。
  3. Action:ノウハウの仮説を実践してみる
    それからしばらくして、このマネージャーの会社で、論争が起きた。彼の会社では、S社との技術提携で、ある重要技術を導入していた。同時に、この技術を受け入れるための人材を探していた。ある時ヘッドハンターから、何とS社の中堅社員が、この会社に来たいとの連絡が入った。社内では、賛否両論が出た。S社の中堅社員は、喉から手が出るほど欲しい。
    しかし採用すると、S社との関係が悪化する。採用したことを、S社に言うわけにはいかない。
    その時彼は、「目指す姿を共有し、論争を収める」を思い出した。そして、関係者に向かって、目指す姿が何か質問をした。「我が社は嘘つきの会社になるのか」
    関係者全員が、「嘘つきにはならない」、つまりS社に対してこのような隠し事はしないと答え、結局このヘッドハントは止めることにした。大きな論争になると思われていたヘッドハントの問題が、このマネージャーの一言で、一瞬で解決できたのだ。
  4. Conceptualization:実行結果を基にノウハウを確定する
    このマネージャーは、「Action」の結果を整理した。先に仮説した、「目指す姿を共有し、論争を収める」は、正しいことが検証できた。今後も、必要な場面で使える。また彼は、Actionの後で、新たな「Ah」を感じた。それは、「我が社は嘘つきの会社になるのか」と聞いた時に、自分はすでにその答えを知っていたという気付きだ。
    あの時は、他の関係者に「目指す姿」を聞く振りをしていたが、実際には、関係者に対し、「我が社は嘘つきの会社になるわけにはいかない。だとすると、このヘッドハントは断るしかないだろう」と、暗黙のうちに考えていた。これは、論争を抑えるノウハウではない。意図して人を目指す姿に導く方法だ。そこで彼は、新しいノウハウの仮説「目指す姿を合意させ、相手の行動を変える」を作り、ATACサイクルをまわし始めた。

ノウハウ創造スキルを組織的に定着させる

意識して、ATACを実践していけば、やがて「気付きを意味解釈してノウハウに換え、実行して成果を上げる」というサイクルを、自然に回せるようになる。そして、成り行きでは決して得られない、多くのノウハウを獲得できるようになる。しかしそのためには、ATACを繰り返し実践することが重要だ。つまり、練習が必要なのである。この練習を組織的に実施することで、ノウハウを生み出し成果を上げ続ける組織を作り上げることができる。
例えば、ある製造業では、現場改善活動の1つのスキルとしてATACサイクルを社員に教育し、ノウハウ創造を部門間で競争させ、また生み出されたノウハウを全社で共有している。ある情報サービス会社では、個人のATACサイクルを、社内ブログを用いて全社で共有する仕組みを作り上げている。

参考図書「ATACサイクルで業績を150%伸ばすチーム革命」(ソフトバンク クリエイティブ)

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