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イノベーションを加速する情報システムの実現

     イノベーションの推進は、企業の重要課題です。しかし、研究開発の情報システム化(業務改革+IT)は、テーマの進捗管理や情報共有、実験ノートの電子化など、業務効率の向上を狙ったものが多いのではないでしょうか。一方で、ハイパフォーマー研究者のノウハウを抽出体系化することで、イノベーションを加速する、つまりクリエーションやブレークスルーを活発化する、研究開発の業務改革、IT化を実現することが可能です。

弊社クライアントの実際の事例は機密度が高いため、以下では、日本を代表する企業のCTO(技術担当役員)、研究フェローのノウハウのインタビュー連載(http://www.sbbit.jp/article/cont1/24343)から、イノベーションを加速する業務改革+IT化のイメージを紹介したいと思います。(以下の役職はインタビュー当時のものです。ノウハウにかかわる以下の解釈は、弊社に責任があります)

1.一流に飛び込むシステム

水処理の世界的権威、東レの栗原フェローは、常に一流に飛び込んできました。自分のテーマの一流は現在どこにあるか、そこにどうやって飛び込むか。留学先もこのような考えで、自ら行き先を希望しています。また、機会あるごとに一流の研究者と会い、その後彼らとは一生を通して刺激し合える関係になっています。研究開発者全員が、自分のテーマに関わる一流がどこにあるか意識し、可能な限りそこと接点を持つように努力し、一流の研究者に会えるチャンスがあれば必ず自ら懐に飛び込みコミュニケーションを持ち、その後継続的に関係を築いていけば、一流からの刺激や情報で、イノベーションを加速することが出来るでしょう。
そこで、研究開発者一人一人に、自らのキャリアを考える使命を与え、世界の一流を意識して自分は今後どのように自分自身の能力を高めていくか宣言させる自己申告DBを構築します。これによって、研究者一人一人に一流に飛び込むことを意識させ、実践させることが可能です。
また、一流人脈のクライテリア(有名科学雑誌に論文が載っているなど)を明確化し、一人一人の研究開発者の持っている一流人脈をDB化します。これは、学会報告や出張報告のDB化で対応できるはずです。一旦登録した自分自身の一流人脈には、今後どのような継続した関係を持つかの方針と、継続的な接点の実績報告を合わせて求めます。外部の人に会う報告書はすでに存在しているはずですから、あえて登録のための作業を増やすことなく、DBのメンテナンスは可能だと思います。このDBで、一人一人の研究開発者が、世界の一流に接点を持つモチベーションを高めるとともに、一流人脈DBそのものが、今後の研究開発において、組織全体にメリットをもたらすでしょう。

2.考える密度を高めるシステム

リチウムイオン二次電池の発明者の一人である、旭化成の吉野フェローは、この業績を上げるために幾つかのノウハウを駆使していますが、その1つが、考える密度を高めることです。ブレークスルー、クリエーションは、一瞬の閃きによっておきます。そのような閃きは、死ぬほど考えた時に起きます。つまり、考える密度を高めなければ、「ユーレカ!」は起きないわけです。そこで吉野氏は、リチウムイオン二次電池が完成して社会に貢献し、自社の業績に貢献するビジョンから、ブレークスルーやクリエーションが必要な作業を逆算し、その出口1つ1つについて、日付を明確化して、達成を誰かに約束しました。例えば「**までに経営会議で、市場性があることを事実に基づいて証明して見せます」、「**までに、4.3Vの電位差の試作品を持ってきます」このようにして自分自身を追い込む場を作り、考える密度を高めたのです。実際、重要な約束を守ったところで得たクリエーション、ブレークスルーは、企業にとっても大変重要な技術資産になっています。
そこで、各研究テーマの計画では、ブレークスルーやクリエーションが必要な作業ごとに、出口で何を実現するか具体的に明確化し、それをいつ、誰に対して示すかまで明記するようにします。そして、この計画の達成を、厳格にフォローするのです。
日本企業の中には、欧米大手企業に比較して、このような明確なコミットメントを計画段階で明らかにしていないところが多いのではないでしょうか。それは、厳格な管理が創造性を阻害するという一般論の故ではないかと思います。しかし、ハイパフォーマーのノウハウからは、むしろそれは逆であるという可能性が高いと考えられます。なお、吉野氏は、単に自分を追い込むだけではなく、常に前向きな気持ちでいることの重要性を強調しています。課題が100個出た時に、100個もあると考えるのではなく、100個解決すれば次に進むことができる、と考えるのです。

3.危機感から課題を明確化するシステム

花王の元CTOの村田氏は、アタック、クイックルワイパー、ヘルシア緑茶と、多くのヒット商品を開発したハイパフォーマーですが、彼は危機感を基に、解くべき課題を考えることに3年程度費やし、それによって大型商品を開発してきました。例えばアタックの場合、当時主力の洗剤でシェア1位の競争相手に勝てず、そこへ外資系企業が参入し、自社はつぶれてしまうという危機感がありました。しかし、自分は毎日遅くまで努力している。なのに何故潰れるのかと疑問を持ちました。そこから必死で考えた。当時は、マーケティングの概念もそれほど普及していなかったのではないかと思いますが、村田氏は、研究開発が努力して得られのは製品の改良であり、これでは1位の競争相手のブランドイメージは変わらない。基礎機能の洗浄力で圧倒的な差をつけることが必要だ。しかし界面張力、汚れの親水化、汚れの加水分解などの従来の考え方ではないまったく別の汚れの落とし方が必要だと考えた。つまり、全く別の汚れの落とし方で、基礎機能の洗浄力で圧倒的な差をつける。これが危機感から生み出された課題でした。課題さえ明確になれば、努力すれば解決は可能です。セルラーゼという酵素によって、この課題を解決し、アタックを製品化したのです。危機感からスタートした課題は、解決によるインパクトが大変大きく、これが大型商品の開発に結び付くのだと思います。研究開発者は危機感は持っていますが、危機感はあまりにも大きいため、これを自分の課題に落とすことができていない。それが、村田氏の、危機感→疑問や矛盾→解決のための徹底的な熟考→課題明確化のプロセスで、解くべき課題まで展開できる訳です。
そこで、研究開発テーマ企画書のフォーマットに、「危機感」、「疑問や矛盾」、「解決のための熟考過程」、「解くべき課題」を入れ込み、テーマ設定ではこれらを徹底的に考え、テーマ承認において徹底レビューし、衆知結集するプロセスを作れば、今以上に大型商品を開発できる可能性が高まると思います。また、危機感、疑問や矛盾、解決のための熟考、解くべき課題が、すべての研究テーマで明らかになっていれば、過去の知見を参照する場合も、何故このような課題に至ったかが分かり、これが新たな課題設定の参考になると考えられます。

4.グローバルコミュニケーションを活発化するシステム

IBMの久世CTO,デュポンの林CTOは、グローバルなコミュニケーションの重要性を強調し、価値あるコミュニケーションを実現するノウハウを実践していました。例えば林氏は、研究者だったころ、カナダの研究者と共に本社を説得し、ナイロン66の耐熱温度を上げるテーマを成功させました。今ではその製品が、大きな収益を上げています。この経験によって、コミュニケーションによってグローバルグループの力を結集すると、大きなことができると認識し、以降、グローバルなコミュニケーションを進めています。欧米の大手企業は、研究テーマや研究所に対して、グローバルに統一基準で評価するシステムが完備し、各研究所は、事業部への、またグローバルグループへの貢献を評価されています。そのため各研究所では、事業部に、グローバルグループに貢献するためにどうすればいいか、機会あるごとに事業部や本社とコミュニケーションをとっている訳です。
そこで、研究テーマ、研究所ごとに、グローバルグループ、事業部から、同一指標で評価されるシステムを作り、また、研究所長やテーマリーダーが、事業部や本社と頻繁にコミュニケーションがとれる機会(会議体など)を増やすことで、コミュニケーション、コラボレーションを活発化し、イノベーションを加速できる可能性があります。


上記事例で示した、研究開発ハイパフォーマーのノウハウは、抉り出し、体系化し、業務標準化やIT化、制度化によって組織的に普及することが可能です。アクト・コンサルティングでは、ハイパフォーマー研究開発者のノウハウや、成功プロジェクトの分析から、イノベーションを加速させる業務や制度のひな型を準備し、研究開発改革を支援しています。

イノベーションを加速する業務改革とIT化にご興味御有りの企業には、まず事例紹介に参ります。メールにて、ご遠慮なくお声おかけください。

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